4.書誌階層の捉え方について

4.1 書誌階層構造登場の背景

 1977年、日本図書館協会は『日本目録規則新版 予備版』を刊行した。この時期は社会全般が情報 化社会へ移行してゆくなど、社会的環境が急激に 変化しつつあった。図書館界も例外ではなく、ジ ャパンマーク(JAPAN/MARC) を始めとする目録の 機械化の波が徐々に押し寄せ、機械可読目録によ る書誌情報の共有化をも意図した新しい目録規則 の登場が待たれるようになった。
 そして予備版から10年余の歳月を要して1987年 に刊行された本版(NCR87)において、「 1目 録の機械可読化、 2目録(書誌)情報の共有化」 を主な目的とする、「書誌的記録の構造および様 式を書誌階層構造的に把握するための条項(1.9 等)」(序説7.書誌階層)が新たに設けられるこ とになったのである。

   Fig.4.1 書誌階層の構造 〈NCR87(1.9.0.1 図1)を参照〉


4.2 基本構造

 書誌階層は、Fig.4.1 に見られるように、記述 の本体となる「基礎書誌レベル」を中心として、 シリーズなどが属する上位レベルの本タイトルか ら始まる書誌的事項から成る「上位書誌レベル」 と、内容など基礎書誌レベルの書誌的事項を構成 する部分の本タイトルから始まる書誌的事項から 成る「下位書誌レベル」で構成される。
 書誌単位とは、上位、基礎、下位各々のレベル でのデータの集合である。例えば、上位書誌レベ ルの書誌単位は、基礎書誌レベルの書誌単位が属 しているシリーズに関するデータの集合を意味す る。上位、基礎、下位各々の書誌レベルに対応し て、「集合書誌単位」、「基礎書誌単位」或いは 「単行書誌単位」、「構成書誌単位」と呼ばれる が、これらは必ず固有のタイトルを持っていなく てはならない。
Fig.4.1 の構造図は、機械可読目録を想定した 場合、MARCレコードから書誌データを抽出し て、カード目録のように物理的な形での目録記入 を構成する以前の段階、つまり、各々の書誌レベ ルに関する書誌データをコンピュータに入力した までの状態を表したものであり、各々の書誌階層 に入力したデータを元にカードイメージに構成し たものがFig.4.2 である。例示は、基礎レベルの 書誌単位を記述の本体としたものであり、上位レ ベルの書誌単位はシリーズに関する事項として、 また、下位レベルの書誌単位は内容に関する注記 事項として記録され、記述の本体を補足する機能 を果たしている。

   Fig.4.2 書誌レベルの書誌単位を記述の本体とした場合の書誌的記録の構成
       〈NCR87(1.9.0.1 A 図2)を参照〉


4.3 書誌階層の捉え方と記載様式

 書誌階層構造を持つ資料の書誌的記録を行う場合、 本タイトルの設定は「書誌階層(1.9 参照)の異なる2以上のタイト ルが表示されている場合は、記述の対象とする書 誌単位のタイトルを本タイトルとする」(1.1.1. 1 A)のであるが、それでは、どの書誌レベルの書 誌単位を記述の対象(本体) にすれば良いのであ ろうか。
この点について、「1.0.2.1 (記述の対象) 」 において、「原則として、単行資料または逐次刊 行物を記述の対象とする」とあり、更に「1.6.0. 0 シリーズに関する事項(記述の意義)」では「 あるシリーズに属する単行資料を記述の対象とす る場合のように、2以上の書誌階層に属している 資料を記述する場合は(中略)上位書誌レベルの 書誌的事項を、シリーズに関する事項として記録 する。(1.9 参照)」と規定されている。このこと から、NCR87の原則としては、常に「単行資料 」を記述の対象とすることが判る。
  ここで言う「単行資料」とは「固有のタイト ルを有する単独に刊行された資料」(付録6.用語 解説)であり、且つ、「1)本タイトルが共通のタ イトルと部編や付録などの従属タイトルからなるも の、2)形態的に2点以上からなっているが、その各 部分に固有のタイトルのないもの、3)本体と、形 態的に分離しているが固有のタイトルのない付録 、補遺などからなるもの、4)セットものの一部を なしているもの、5)逐次刊行物の一部をなしてい るもの」(1.0.2.1 A ア) 単行資料)を含むもので 、必ずしも物理的な資料の1点1点を指すのでは ない。あくまで、「固有のタイトルを持っている単 行の資料の最小の単位」のことである。
  例えば、多巻ものの各資料に固有のタイトル があれば、各資料は単行単位であり、固有タイト ルが無ければ、その資料1つずつは単行資料とは ならない。
  さて、書誌階層構造を持つ資料の書誌的記録 を行う際、集合単位の記述対象は集合単位の書誌 的事項であり、単行単位の記述対象は単行単位の 書誌的事項であるように、記述対象を判定すると きは、あくまで書誌単位概念でとらえるのであり 、著作或いは物理的な単位で捉えるのではない。 この方法は、機械可読目録を対象とする場合には 、書誌データの共有化、流通ということを考慮す るとデータの記載様式が統制されていることは必要なこと であり、合理的な方法であると言える。
  しかしながら、カード目録を主体として考え たとき、原則に拠った目録記載様式では利用者に とって分かり難いものとなったり、資料の管理上 、物理的に1点ずつの目録記述が必要なときには 原則に拠る記載様式は必ずしも適当でない場合が ある。これは原則に拠る方式は著作概念に立脚す るものではないため、仮に記述の本体となる単行 資料の固有のタイトル部分がそれ単独では資料の 主題を表すには不明瞭な場合、主題が明確でない 本タイトルから始まる目録記述になってしまうた めに、カード目録では利用者に違和感を与えてし まうからである。また、映像資料を始めとする視 聴覚資料の場合は、物理的に2点以上で1つの発 行番号が付与され、さらに1つの容器に納められ て発行されているものも多いので、物理単位での 記述に関しては必ずしも有効な方法とは言えない 面もあるが、図書に関して言えば資料の管理運用 は物理単位が基本であり、カード目録も管理運用 面に対応して、資料1点に対して1種類作成する 方が実用的と言える。
  このような問題点に対処して、NCR87では 、「多段階記述様式」、「簡略多段階記述様式」 、「分割記入様式」や「物理レベルでの記述様式 」の使用も認めており、この点において、著作概 念は全く消滅したわけではないと言え、従来のカード 目録の使用を考慮したものと思われる。
 
 4.4 「多巻もの」と「シリーズ」
 
  では、カード目録による書誌的記録を主体に して考えた時、原則に拠る方法と別法のどちらの 方法がふさわしいのであろうか、その判定方法に ついて考える必要がある。
  NCR87以前のNCR65、新版予備版など書 誌階層概念のないこれらの目録規則は、著作単位 或いは物理単位に基づいているのだが、いずれに しても、書誌階層構造を持つ資料の記述対象の判 定には、「著作」の概念が不可欠である。これは 、記述の対象となる資料が「多巻もの」を構成す る1部分であるのか。それとも「シリーズ」を構成する1部 分なのかを判定するということである。
  「多巻もの」とは、本来は全体で1つの著作 物であるものを、発行の都合上、複数に分割して 刊行しているもので、これに対して「シリーズ」 とは、全体として1著作を構成するのではなく、 複数の独立した著作が「シリーズ名」という共通 のタイトルの下に納められているものを指す。「 シリーズ」の例としては「岩波文庫」が掲げられ るが、これは1つ1つの独立した著作が集まって 「岩波文庫」を構成しているのであって、「岩波 文庫」が1つの著作物なのではない。
  「多巻もの」か「シリーズ」かを判定するこ とによって、「多巻もの」であれば、全体のタイ トル、つまりシリーズ名から記述が始められ、「 シリーズ」であれば、各巻のタイトルから記述が 始められる。また、「シリーズ」の場合、資料1 つずつが独立した著作であるので、各著作には固 有のタイトルが存在しなくてはならない。この点 において、「シリーズ」に属する各著作は、NC R87における単行資料と同義であり、さらに、著 作概念に照らし合わせて考えても、「シリーズ」 の場合、NCR87の原則通りの目録記述で良いと いうことになる。
  つまりカード目録を主体として考えた場合の 記述の判定において、対象資料が「シリーズ」に 属するものであれば、単行資料を記述の本体とす るNCR87の原則通りの方法で良く、「多巻もの 」であれば「多段階記述様式」や「分割記入様式 」などの別法を採るということであり、結論とし てカード目録の記述においては原則に拠る方法と 別法とを場合によって使い分けることが必要であ ると言える。そして「シリーズ」か「多巻もの」 かの判定は「著作概念」に拠って行うのである。  ところで「シリーズ」か「多巻もの」かを判定 する際に重要な役割を果たす「著作」とは一体何 なのであろうか。NCR新版予備版では「記録お よび伝達のために、思想、文学、芸術等を文字・ 記号などで表現したもの」(用語解説)、NCR 87では、「通常、個人または団体による、知的・ 芸術的創造の結果で、文字、記号、図形等で表現 され、記録されることによって具体化しているも の。タイトルを有することで、一つの実体として 扱うことができる」(付録6.用語解説)と定義し ているが、実際に「シリーズ」か「多巻もの」か を判定する際に、この「著作」の定義が有効に機 能するのかどうか、次に3つの例示を参照しなが ら検証してみる。

4.5 具体例として

Fig.4.3 『NASAビデオシリーズ 第1巻 われわれの住む宇宙』

 全体に共通するタイトルと各巻のタイ トル双方が認められる。この資料が「シ リーズ」に属する1巻であるのか、「多 巻もの」の中の1巻であるのかの判定は 双方のタイトルのうち、どちらに著作性 が強いかを見極めることによって下すこ とができる。『NASAビデオシリーズ 』は、NASAが制作したビデオという意 味であって、これ自体に明確な主題は見 いだせない。これに対して各巻のタイト ル(第2巻 ボイジャーが明らかにした 木星と土星の素顔,第3巻 天王星新し い発見の数々)には思想や知的創造性が 認められ著作性を有している。よってこ の資料はシリーズの中の1巻であると判 定でき、各巻のタイトルから記述が始め られるので、カード目録の場合でも、原 則通りの記載様式を採ることになる。
 なおビデオカセットのタイトルラベル には、『NASA製作の「宇宙・太陽系 探査のビデオシリーズ」日本語版』と表 示されているが、タイトルフレームには シリーズに関する情報はなく、その他の 表示では単に「NASAビデオシリーズ となっているので、これを採った。
 番組のエンドタイトルのクレジットに は“Written and Directed by Lester Novros”ほか個人9人と“Produced by Graphic Films Corp. ”の表示が現れ、 一旦画面が暗転した後、「日本語版監修 東京大学理学部助手 松井孝典」「制作協 力 日本メデュレックス」「日本語版企画 ・制作 丸善株式会社」 の画面が出る。 これら情報源の優先順位ならびに表示箇 所の多数決によって例示のような責任表 示とした。より来歴が明確ならば、「… のビデオの日本語版」といった注記も可 能であろう。
 またカセットには「Bilingual 日本語 /英語」のシールが貼ってある。再生し てチェックしたところ、Rチャンネルに 英語が、Lチャンネルに日本語と英語の 両方(英語は音量を小さくしてある)が 録音されていたので、本論 Fig.3.6,3.7 の考えかたに沿って記録した。

    Fig.4.3
   
   最上位書誌レベル(集合単位) Maruze Audiovisual library
   上位書誌レベル(集合単位) NASAビデオシリーズ   
   基礎書誌レベル(単行単位) 1巻 われわれの住む宇宙  
                     2巻 木星と土星の素顔
                               
   (原則)                        
                               
   われわれの住む宇宙△[映像資料]△=△Story of our   
   universe△/△丸善日本語版企画・制作△;△Graphic    
   Films,△ジェット推進研究所オリジナル版制作       
   東京△:△サン・グラフ△(販売元),△[1989]     
   ビデオカセット1巻△(27分)△:△VHS,△2ヵ国語(日  
   本語・英語),△Hi-fi,△カラー             
   (Maruzen audiovisual library.△NASAビデオシリー  
   ズ△;△第1巻)                    
   2ヵ国語音声(Lチャンネルに日本語と英語,Rチャンネルに英語)  
                               
                               
   (別法)[分割記入様式]                
                               
   NASAビデオシリーズ△第1巻△[映像資料]△/△丸  
   善日本語版企画・制作△;△Graphic Films,△ジェット推  
   進研究所オリジナル版制作                
   東京△:△サン・グラフ△(販売元),△[1989]     
   ビデオカセット1巻△(27分)△:△VHS,△2ヵ国語(日  
   本語・英語),△Hi-fi,△カラー             
   (Maruzen audiovisual library)             
   2ヵ国語音声(Lチャンネルに日本語と英語,Rチャンネルに英語)  
   第1巻:△われわれの住む宇宙              


Fig.4.4 『ベトナム戦争 第1巻 暗黒の時代/フランスの敗退』

このビデオは、13回シリーズで放映さ れたテレビ番組をビデオ化したものであ るが、販売上の理由からか、或いはビデ オテープの容量の関係からか、1巻に2 回分の放送が収められた全7巻(7巻目 のみ1回分で計13回)がセットで販売さ れており、書誌階層構造をよりわかりに くいものにしている。
 この資料の場合、全体に共通するタイ トルは、「ベトナム戦争」であると容易 に判断できるが、第1巻には「暗黒の時 代」と「フランスの敗退」という2つの タイトルが認められ、この2つのタイト ルを固有のタイトルと見做すのかが、ま ず問題となる。
 この点について、NCR87「本タイト ル」(1.1.1 )の項で、「資料全体に対 する総合タイトルがなく、資料の内容を なす2以上の著作それぞれのタイトルが 表示されているときは、これらのタイト ルと責任表示等を、情報源における表示 の順で列記する」と規定している。この 資料の場合も「暗黒の時代」と「フラン スの敗退」の2つを1個の固有のタイト ルとして扱うことができる。
 このように、「資料全体に対する総合 タイトルがなく、資料の内容をなす2以 上の著作それぞれのタイトルが表示され ている」ことは、ビデオテープやビデオ ディスクにおいては決して稀なことでは ない。むしろ、今後、技術革新が進むに つれて、記録媒体の容量が更に拡大して いけば、このようなケースは益々増えて いくであろう。
 さて、この資料の場合、『暗黒の時代 /フランスの敗退』に著作性が有るかを 考えてみると、これ単独では何の暗黒の 時代なのか、何におけるフランスの敗退 なのかが不明瞭であり、1つの著作物で あるとは言い難い。これはあくまでベト ナム戦争における暗黒の時代、或いはフ ランスの敗退であり、その意味で「ベト ナム戦争」が1つの著作物であると判断 できる。よって、この資料は全体のタイ トルから記述を始めるのが妥当であり、 「多巻もの」の中の1巻であることが判 る。
   
    Fig.4.4
                               
   上位書誌レベル(集合単位) ベトナム戦争        
   基礎書誌レベル(単行単位) 1巻 暗黒の時代;フランスの敗退
                     2巻 アメリカの影;北爆開始
                               
   (原則)                        
                               
   暗黒の時代△[映像資料]△=△The roots of war△;△  
   フランスの敗退△=△The first Vietnam War, 1946-1954  
   /△リチャード・エリソン製作総指揮△;△ジュディス・  
   ベッチョーネ製作                    
   東京△:△TDKコア△(発売元),△c1987      
   ビデオカセット1巻△(114分)△:△VHS,△Hi-fi,△カラー 
   (一部白黒)                      
   (ベトナム戦争△=△Vietnam△:△a television history 
   ;△1)                        
                               
                               
   (別法)[分割記入様式]                
                               
   ベトナム戦争△1△[映像資料]△Vietnam△:△a tele- 
   vision history△/△リチャード・エリソン製作総指揮△  
   ;△ジュディス・ベッチョーネ製作            
   東京△:△TDKコア△(発売元),△c1987      
   ビデオカセット1巻△(114分)△:△VHS,△Hi-fi,△カラー 
   (一部白黒)                      
   1:△暗黒の時代△=△The roots of war△;△フランス  
   の敗退△=△The first Vietnam War, 1946-1954      


Fig.4.5 『絶滅収容所アウシュヴィッツ全記録 ナチスの思想と行動』

これも全体と各巻双方に固有のタイト ルの存在が認められる。この資料の場合 も、前例と同様に著作の判定を行ってみ ると、困ったことに双方のタイトルにそ れぞれ主題が認められ、どちらも目録規 則上に定義される「著作」の概念に該当 してしまう。
 この場合、著作の主体を明確にするた めには、この資料が元々は「ナチスの思 想と行動」など、1つ1つの独立した著 作として存在しているものを、発行者が 「絶滅収容所アウシュヴィッツ全記録」 という企画の下に集めて発行したものな のか、それとも、全体の企画が先に行わ れ、その企画意図に沿って制作された作 品群なのかを判断しなくてはならず、発 行元或いは制作者がどのような意図で企 画・制作したものかまで、カタロガーは 汲み取る必要が出てくる。
 これは既に、目録規則上の「著作」の 定義を越えた次元で著作を判定しなくて はならないということである。発行者は 何も図書館の目録が作成し易いように考 えて資料を発行しているのではなく、実 際にはこのようなケースは非常に多いと 言える。
 実はNCR65や新版予備版の問題点は この点にあったわけであり、カタロガー に「シリーズ」か「多巻もの」かの判断、 つまり著作の判定を委ねる規定になって いたにも関わらず、その規定の根底にあ るべき「著作」とは何かという定義が明 確ではなく、混乱を引き起こしていたの である。書誌単位概念に立脚したNCR 87では「多巻もの」という用語はすでに 無く、本則に拠る限り、「シリーズ」と 「多巻もの」の区分は、もはや意味のな いものになってしまったが、カード目録 の使用を前提に考えた時、別法を採った 方が良い場合も多く、記述本体の判定に は「著作概念」は欠かせない。この点に おいて、カード目録における記述対象の 判定方法は、NCR65や新版予備版の時 代と少しも変わっていないわけで、「著 作」を判断の基準とする限り、「著作と は何か」が明確に定義されていないこと は大きな問題であり、真剣に検討する必 要がある。
   
    Fig.4.5 
        
   上位書誌レベル(集合単位)  絶滅収容所アウシュヴィッツ全記録.△映像の部
   基礎書誌レベル(単行単位) 1巻 ナチスの思想と行動  
                     2巻 絶滅収容所
                               
   (原則)                        
                               
   ナチスの思想と行動△[映像資料]△=△アウシュヴィッ
   ツを生んだもの△/△グリーンピース出版会制作    
   東京△:△グリーンピース出版会,△1990       
   ビデオカセット1巻△(20分) △:△VHS,△白黒    
   (絶滅収容所アウシュヴィッツ全記録.△映像の部△;△
   第1巻)                      
                             
                             
   (別法)[分割記入様式]              
                             
   絶滅収容所アウシュヴィッツ全記録.△映像の部△第1巻
   [映像資料]△/△グリーンピース出版会制作     
   東京△:△グリーンピース出版会,△1990       
   ビデオカセット1巻△(20分) △:△VHS,△白黒    
   第1巻:△ナチスの思想と行動△:△アウシュヴィッツを
   生んだもの                     


4.6 書誌階層を捉える上での課題

 NCR87は時代の要請に合わせ、機械可読目録 と従来のカード目録双方に対応している点で画期 的であり、記述対象の標準化を定義したことは評 価できるが、従来のカード目録を対象とした場合 の問題点が、そのまま持ち越されてしまったよう で残念である。
 今回、カード目録を記述の主体として考えた場 合、記述対象の判定に欠かせない「著作」の定義 が曖昧なために、実際には、カタロガーの経験や 勘に頼る場面が多く、混乱を引き起こしている問 題について述べた。しかし、少し視野を広げて見 ると、NCR87には用語の定義に曖昧さを残して いるものが他にもあることに気づく。例えば「固 有のタイトル」とは一体何を指すのか、NCR87 には明確な定義として記載されていない。学術情 報センターでは、「固有の標題」とは何かを示す のは容易でないとしながらも、当初、「固有の標 題ではないもの」を、「書誌単位を出版物理単位 (又は下位レベルの書誌単位)に分割するために与 えられた名称」で、「巻次等」「部編名」がある と規定し、これに該当しなければ固有のタイトル として扱う、としていた。ところが、『目録シス テム利用マニュアル データベース編 改訂版』 (1990年5月14日運用開始)の刊行に伴い、「部 編名」であっても別個の著者等を有していれば固 有のタイトルとして扱うと変更され、また、「固 有の標題でないもの」か否かさえ容易に判断でき ないものは、「固有の標題」と見做すと規定して いる。
 このように、目録の標準化を前提とし、データ の共有化を図ることを目的とする学術情報センタ ーでさえ、用語の定義に曖昧さを残している。1 つ1つの用語の解釈を統一し定義していくのは並 大抵のことではないが、現実に混乱を招いている 今、早急に対処する必要があろう。