2.映像資料目録の具体例について

 目録の実際例に則してポイントを概説する。
 ビデオの著作は、

a) 最初にビデオで発表されたもの
b) テレビ放映されたもののビデオ版
c) 映画のビデオ版

 など幾つかの種類分けが出来るかと思われる。
 また、それぞれに日本の資料と外国の資料とがあり、外国の資料の場合には輸入されたビデオ版そのまま(テレビ方式の み変換されるケースを含む)の場合と、日本語字幕等を入れる場合とがある。また外国ではテレビ放映または劇場公開され たが、日本ではビデオでのみ発表されたもの、とか、劇場公開を予定せずに製作される劇映画(Vシネマ)もあるなど、実 態は様々である。
 目録上の記載でこれらの種類分けがどのように表現されているかを見ることが、一つのポイントであろう。


Fig.2.1 『海和俊宏最速へのスキーテクニック』(最初にビデオで発表されたもの)
 「責任表示がタイトルに不可分の形で組み込まれていても、資料に表示されている責任表示は記録する」(1.1.5.1A)。ここ で「海和俊宏」は構成と解説を兼ねており「・」で結んで記録する。当該資料に出版地、出版年の表示はないが、「ユニ映 像年鑑1991」に拠る情報を[ ]に入れて補記し、出版にかわる役割表示(総発売元)は( )に入れて付記する。(この 例示のみ目録カードの実際のイメージを表しており、スペース記号は略した)

     Fig.2.1
   
          カイワ トシヒロ サイソク エノ スキー テクニック
    V784.3     海和俊宏最速へのスキーテクニック [映像資料] : カ
     Ka      ービングターンの秘訣 / 海和俊宏構成・解説 ; カイ
           ワスポーツクリエイティブ企画 ; フエダプロダクション
           制作
           [東京] : アルファイメージ (総発売元), [1986]
           ビデオカセット1巻 (47分) : VHS, カラー
           VPVW-62297 : \9,270 (税込)
    700175
   
   鶴見屋書店   t1. カイワ トシヒロ サイソク エノ スキー テクニック t2. カービング ターン ノ ヒケツ
    \8,700    a1. カイワ,トシヒロ a2. カイワ スポーツ クリエイティブ a3. フエダ プロダクション
    91.09.01  s1. スキー 1784.3


Fig.2.2 『椎名誠世界最大のサンゴ礁グレート・バリア・リーフを潜る』(最初にビデオで発表されたもの)

 タイトルが文字の大きさを変えて2〜3行で表示されているが「原則として、情報源に表示されているままに…(中略) 一部が2行書き、または小さな文字で表示されていても、1行書きとし、全部同じ大きさの文字で記録する。」 (1.1.1.2)。
 容器には再生時間60分の表示があるが、実際に映像の記録されている部分を実測したところ54分30秒だった(この時間と テレビ朝日の製作であることから、テレビ放映されたものではないかとも考えられたが確認できなかった)。再生時間につ いては第6章(録音資料)の方が詳しいが、原則として容器等に表示された再生時間を、端数を切り上げて分単位で記録し 、表示がないか不完全な場合は記録しない、としており、資料を実測することまでは求めていない(6.5.1.2D)。番組の前後 のテープ余長を考慮すれば、この程度の差ならば容器の表示通りの時間を記録して良いと考える。

   Fig.2.2

   椎名誠世界最大のサンゴ礁グレート・バリア・リーフを潜
   る△[映像資料]△/△日本記録センター,△テレビ朝日
   製作
   東京△:△ポニーキャニオン△(製造・発売元),△[19--]
   ビデオカセット1巻△(60分)△:△VHS,△Hi-fi,△カラー
   PCVP-10212△:△\2,900△(税込)

  *エンドタイトル(クレジット・スクロール)の内容
    撮影 中村征夫
       中島光男
       広瀬飛一
    VE 岩瀬修一
       渡辺勝晃
       田中義治
    音効 井陽一郎
    編集 芦垣均
    演出 谷崎聡一郎
       渡辺正悟
   制作著作 テレビ朝日/日本記録センタ−
    発売 株式会社ポニーキャニオン


Fig.2.3 『これがグレートヒマラヤだ!』(テレビ放映されたもののビデオ版)

 製作・著作から、テレビで放映されたもののビデオ版だと推測された。容器には放映についての表示がなく、製作プロダ クションの会社歴から、日本テレビの「マイルドセブンワールドスペシャル」という番組で放映されたことがわかったが、 放送日等の詳細は不明の為、結果として目録では「19**年*月*日**局放映番組のビデオカセット版」といった注記はし ていない。
 プロローグにCM(MILD SEVEN) が2回流れてから内容が始まる。"MILD SEVEN WORLD"の文字はこの他、かつてCMが挿 入されたであろう約15分のインターバルでスーパーされ、容器にも表示されており、タイトル関連情報かどうか扱いに苦慮 したが、他にも同じタイトルのスペシャル番組が何本か放映されたのであろうとの観察から、ここではシリーズタイトルと みなした。
 また番組のエンドクレジットに、スタッフ名等がスクロールして現れ、その数は32個人5団体に及んでいる。この中には 容器に表示はないが、実際の番組製作上は重要な役割を担う「プロデューサー」も現れ、これは本来ならば責任表示に記録 するべきではないか、などと考えさせられる。
 このようにタイトルフレームは、最優先の情報源ではあるが、実際の確認作業ではテープをスチルにしたり、ビデオプリ ンタでハードコピーをとるなどの必要も伴い、困難を感じるものである。

   Fig.2.3

   これがグレートヒマラヤだ!△[映像資料]△:△神秘・
   人・自然△/△岩下莞爾企画・総合演出△;△羽柴秀彦構
   成△;△日本テレビ製作・著作
   東京△:△バップ△(発売元),△[1990]
   ビデオカセット1巻△(94分)△:△VHS,△Hi-fi,△ステ
   レオ,△カラー
   (Mild seven world)
   制作協力:△ヴィジュアルフォークロア映像民俗社,△N
   TV映像センター
   ナレーター:△林隆三,△木内みどり
   VPVW-62297△:△\12,000△(税込)

  *エンドタイトル(クレジット・スクロール)の内容
   ナレーター 林隆三
      木内みどり
   構成 羽柴秀彦
   音楽 吉川洋一郎
   演出 北村皆雄(ほか4人)
   撮影 明石太郎(ほか4人)
   VE 岡部聡(ほか2人) 
   調査・通訳 (3人)
   編集 清水真二
   音効 森本喬雄(ほか1人)
   CG 青木伸治
   VTR編集 宮里実和
   MA 植井英二
   広報 丸山能明(ほか1人)
   制作進行 星智子
   プロデューサー みうらようこ
   協力 AIR-INDIA
      山階鳥類研究所
   技術協力 NTV 映像センター
   制作協力 ウィジュアルフォークロア
   企画・総合演出 岩下莞爾
   制作 藤原千晶
   製作著作 日本テレビ 
     (ここまで 1:37'30")


Fig.2.4 『天平の甍』 Fig.2.5 『風の又三郎』(劇映画のビデオ版)

元の映画とビデオ版の2重構造を目録上に表現しなければならない。この場合元の映画の来歴は注記に記載し、ビデオ版 の出版者を出版に関する事項に記録する。これに元の映画の出版・製作の記録を続けて記載する方法もあろうが、記述が混 在して分かりにくいものとなることを避ける意味から注記に「同じタイトルの映画のビデオカセット版」という、NCR87 の例示の通りの記録方法をとった。
 責任表示では、監督→原作→脚本の順に記録した。劇映画における責任の重要度から、監督は原作者に優先する第1著作 者とした。原作の有る無しに関わらず、 監督名はその映画作品を同定する為の重要な情報と考えられる。

   Fig.2.4

   天平の甍△[映像資料]△/△熊井啓監督△;△井上靖原
   作△;△依田義賢脚本△;△天平の甍製作委員会製作
   東京△:△東宝△(発売元),△[1986]
   ビデオカセット1巻△(152分)△:△VHS,△カラー
   音楽:△武満徹
   出演:△中村嘉津雄,△大門正明,△浜田光夫,△草野大
   悟,△田村高廣,△井川比佐志,△藤真利子
   同じタイトルの映画△(1980年)△のビデオカセット版
   \14,800


   Fig.2.5

   風の又三郎△[映像資料]△:△ガラスのマント△/△伊
   藤俊也監督△;△宮沢賢治原作△;△筒井ともみ,△伊藤
   俊也脚本
   [東京]△:△朝日新聞社,△[1990]
   ビデオカセット1巻△(107分)△:△VHS,△Hi-fi,△ステ
   レオ,△カラー
   (朝日ビデオライブラリー)
   音楽:△冨田勲
   出演:△早勢美里,△小林悠
   同じタイトルの映画△(1989年)△のビデオカセット版
   V148A1401△:△\15,244△(税込)


Fig.2.6 『黒い雨』(劇映画のビデオ版)

 発売元は、販売元よりも上位の概念であり、出版事項に記載、販売元は注記に記載した。容器中央の「死ぬために生きて いるのではありません」はキャッチコピーであり記録しない。

   Fig.2.6

   黒い雨△[映像資料]△/△今村昌平監督△;△井伏鱒二
   原作△;△石堂淑朗,△今村昌平脚本△;△今村プロダク
   ション,△林原グループ製作             
   東京△:△東北新社△(発売元),△[1988]     
   ビデオカセット1巻△(123分)△:△VHS,△Hi-fi,△白黒
   プロデューサー:△飯野久              
   音楽:△武満徹                   
   撮影:△川又昂                   
   出演:△田中好子,△北村和夫,△市原悦子      
   同じタイトルの映画△(東映,△1988年公開)△のビデオ
   カセット版                     
   ビデオの販売元:△東映               
   ビスタサイズ                    
   1989年カンヌ国際映画祭2部門受賞,△第13回日本アカデ
   ミー賞9部門受賞,△文部省特選           
   VFCF00526△:△\15,244△(税込)  


Fig.2.7 『十戒』(劇場公開された外国映画のビデオ版)

 本タイトルの別言語として「The Ten Commandments」を並列タイトルとする。 Ten Commandments は固有名詞なので、単 語の頭は大文字となる。

   Fig.2.7

   十戒△[映像資料]△=△The Ten Commandments△/△セ
   シル・B・デミル製作・監督             
   [東京]△:△CIC・ビクタービデオ△(発売元),△
   c1984
   ビデオカセット2巻△(219分)△:△VHS,△Hi-fi,△ステ
   レオ,△カラー                   
   英語の台詞,△日本語字幕付             
   出演:△チャールトン・ヘストン,△ユル・ブリンナー,
   アン・バクスター,△エドワード・G・ロビンソン   
   同じタイトルの映画△(アメリカ△:△パラマウント映画,
   1956年製作)△のビデオカセット版          
   オリジナル全長版                  
   1956年度アカデミー特殊効果賞受賞          
   CSPC 6005△:△\26,000


Fig.2.8 『茶館』(外国映画の直輸入版)

 タイトル・フレームから、北京で製作され、香港で発表された中国映画のビデオ版であることがわかる。CHINA VIDEO MO VIESを並列シリーズとして採った。文字は転記の原則によりそのままを記載した。原語は中国語である。
 容器にはNTSCの表示があり、日本のテレビ方式に合致するので特に記録しないが、これがPALやSECAMの場合 には形態に関する注記に記録して適切な再生機械を用意する必要がある。

   Fig.2.8

   茶館△[映像資料]△=△The teahouse△/△謝添導演,
   ;△老舎編劇                    
   Hong Kong △:△Solid video △[発売],△[19--] 
   ビデオカセット1巻△(129分)△:△VHS,△カラー   
   (中国録像電影△=△China video movies)       
   主演:△于是之,△鄭榕,△藍天野          
   中国語の台詞                    
   N107E0025 1014△:△\7,800△(税込)        


Fig.2.9 『ミラノの奇蹟』(劇場公開された外国映画のビデオ版)

 「出版年の表示がないとき、著作権表示年などをその代用として、著作権表示年等であることを明示して用いることがあ る」(1.4.3.1A) ので、出版年として、 c1980と記録した。
 容器の解説から、この映画の原作のタイトルは『善人トト:Toto il buono 』であることがわかるので、「原作のタイト ル」として注記した。

   Fig.2.9

   ミラノの奇蹟△[映像資料]△=△Miracolo a Milano △ 
   /△ヴィットリオ・デ・シーカ監督△;△チェーザレ・ザ 
   ヴァッティーニ原作                  
   東京△:△東芝,△c1984                
   ビデオカセット1巻△(96分)△:△VHS,△白黒     
   原作のタイトル:△善人トト△=△Toto il buono     
   出演:△エンマ・グラマーティカ,△フランチェスコ・ゴ 
   リザーノ,△ブルネッラ・ボーヴォ,△パオロ・ストッパ,
   グリエルモ・バルナーボー,△アンナ・カレーナ     
   イタリア語の台詞,△日本語字幕付           
   同じタイトルの映画△(イタリア,△1951年)△のビデオ 
   カセット版                      
   1951年カンヌ国際映画祭グランプリ他各賞受賞      
   VTS-F161V△:△\14,800