1.映像資料目録のポイントについて

1.1 記述の精粗(1.0.4)

 日本目録規則1987年版(以下NCR87という) では、記述の精粗という概念が導入されている。  当研究班では、その中で第2水準が視聴覚資料 目録の一般的な記録方法として推奨できると考え て、後述の例示でもこれを用いた。
 第1水準では、資料種別や形態的細目を記録し ないため、それが非図書資料であることも、VH Sとかベータといった、視聴覚資料に特有の規格 についても記録できず、簡易でありすぎる。
 第3水準では、すべての書誌的事項を記録する ことになるが、映像資料の場合、第1情報源であ るタイトルフレームに現れる膨大な数のスタッフ やキャストをどこまで記録するかという問題があ る。内容に関する注記としての要旨のまとめ方と いうのも、実際の作業にはやや難しさがあり、こ れらの事項を全て詳細に記述することはあまり現 実的でない−などの問題点が考えられた。

 1.2 記述の情報源(7.0.2.2)

 記述の第1情報源は、その資料の内容と不可分 の表記、即ち「タイトル・フレーム(タイトル、 スタッフ、出演者などが表示されている画面)」 であって、次に 「ラベル」「付属資料」「容器」「その 他の情報源」の優先順位となっている。つまり映 像資料はそれをVTRや映写機で実際に上映した 画面から目録を採ることが原則であり、例示でも その作業を試みている(Fig.2.2参照)。実際の作 業としては、情報の多くは容器に拠ることが多い し、容器や付属資料にしか出版に関する事項や上 映時間が表示されていない場合もある。しかし容 器にキャッチコピー等の“ノイズ”が加わってタ イトルが判断しにくかったり、またビデオ版のも ととなる作品の来歴や、著作者の役割(責任の大 きさ)の確認などのためには、実際に資料を再生 チェックした方が正確な判断ができ、タイトルフ レームが最優先の情報源であることは原則だ。

1.3 責任表示(1.1.5)

 第2水準では、同じ責任表示の場合、2までを 記録することができる(3以上の場合は1つを記 録して[ほか]とする)が、劇映画やドキュメン タリーなどの映像資料においては、各々の責任者 の果たしている役割やその意味についてよく理解 し、記述の順序等を考える必要がある。
 劇映画の責任表示においては、その役割の重要 性などに鑑み、次の順序で記録することが適当で あろう。

    監督→原作者→脚本→製作

 ただし、映画への原作の関与(影響)の仕方が 弱い場合には原作者を注記に記録することもある (7.7.3.1C) 。製作は、個人の場合も団体の場合 もあるが、2まではあわせて列記する。
 劇映画の出演者はその働き(印象)の大きさに 関わらず責任表示ではなく注記に記録する。その 人数は、第2水準においては、主演者2〜5人程 度が妥当であろう。出演者の著名度や出演時間の 長短など考えるべき要素はあるが、大抵はタイト ルフレームや容器における表示の序列などによっ て主要出演者を絞ることができよう。
 ノンフィクションやドキュメンタリーでは、責 任者の役割の軽重が必ずしも明らかではない場合 が多い。基本的には、監督または演出、構成とい った役割の個人をその筆頭に置くべきと思われる が、一般に文化・産業映画などでは、こうしたス タッフの個人名よりも、企画者(ある目的のもと に作品を企画し資金を出した者)と制作者(実際 に撮影・編集作業を行った者)が団体名で表示さ れるだけのケースが多く、演出者や撮影者の個人 名は表示されないか、エンドタイトルに僅かにク レジットされる程度というのが普通である。一方 で実際の作品への貢献度は薄いのではないかと思 われる監修者が、作品を権威づける(?) ために容 器に大きく表記されている場合など苦慮するが、 各目録作成機関の考えかたによって、責任表示と する場合もあれば省略する場合もあろう。
 要するに、著作者とは「著作の知的もしくは芸 術的内容の創造、ないしは具現(演奏等を含む) に責任を有するか、寄与するところがある個人な いしは団体」(1.1.5.0)であるということをポイン トとして、それぞれの作品ごとに判断することと なろう。ナレーターは注記に記録する。

1.4 複製資料としての映像資料

 劇映画のビデオ資料は「映画の著作の複製物」 であるが、目録の上では、オリジナルの映画につ いての記述と、そのビデオ版についての記述かが しばしば輻湊し混乱しがちなことが指摘できる。
 図書館の目録で記録すべきなのは、そこで収集 ・提供されるビデオカセット・ディスク資料その ものに関する情報であり、そのオリジナルとの関 係は、NCR87第12章の複製・原本代替資料に似 たものがあると言えよう。
 こうした考え方に立てば、例えば、1950年にア メリカのMGM映画が製作した劇映画でも、目録 では、日本でビデオカセット版を出版した会社が 出版者、所在地の東京が出版地、販売年の1990年 を出版年とする、という扱いを行うことになる。 オリジナルの映画の製作者・製作地・製作年など の情報をかっこ記号(  )などを用いて出版に 関する事項で併記することは技術的には可能であ り、それなりに有益な情報であると思われるが、 実際の作業や利用を混乱させない為には避けるべ きことと考える。従ってこのような例では、注記 において、「同じタイトルの映画△(アメリカ△ :△MGM映画,△1950年製作)△のビデオカセ ット版」などと記録する方法が推奨されよう。
 しかし責任表示においては、その作品の創造へ の貢献度からしてオリジナルの映画の監督や脚本 家を除くことはできないし、除いては作品の同定 も不可能である。こうした点でオリジナル(もと の劇映画)と複製物(ビデオ)の記述はどうして も輻湊せざるを得ない。日本語吹き替え版の演出 や製作者の存在などは殊に混乱を招くように思わ れ、記録する場合は各々の役割を「○○○○日本 語版演出」などと正確に記述する必要があろう。