6.おわりに

 斎藤によればすでに19世紀後半、「学問の拡大と発展により、学生は大学在学中と いう一定期間にすべての知識を習得することはできなくなった。そこでロビンソン( O.H.Robinson)は教師は学生に対して知識をどこでどのように獲得すべきかを教育す べきであると考え、図書館を利用した学習というものの重要性に着目」した。そして ロビンソンは「ある主題や問題の処理のために必要となる知識を自らの力で獲得する ための技能は、生涯にわたって学習を継続するための能力を学生に身に付けさせる」 として、図書館で一人一人の学生が主体となって展開される探究学習を大学教育の中 心に据えるあり方を示した20) 。
 本稿では視聴覚資料がこのような問題発見型の探究学習に非常に適した特性を備え ていること、またそれが図書・文献資料と有機的にむすびつけられたものでなければ ならないことを見てきた。このような意味において、大学図書館には視聴覚サービス の積極的かつ創造的な導入が求められるし、それは大学図書館の本来持つ目的に合致 するものである。
 人間が本当に知りたいことを知りたい、わかりたいという要求の前には、それが文 献であれ、映像であれ、モノであれ、その形態や手段は選ばないという知的貪欲さこ そが大切であり、それこそが全ての情報行動の源であるはずだ。しかし今日、そうし た貪欲さがわが国の大学キャンパスから次第に失われつつあるという懸念はないだろ うか。
 いま、大学図書館は原点に立ち戻って自らのコレクションとサービスを再構築し、 利用者に向けて知的刺激を積極的に発信していくという大きな使命を担っているよう に思う。その有力な仕掛けのひとつとして、視聴覚サービスがなし得ることは少なか らずある筈である。