1.OHP用トランスペアレンシー

 OHP(オーバーヘッドプロジェクター)用トランスペアレンシ ー(以下TPという)は、普通、A4版程度の大きさの透明なプラ スチックシートに、フェルトペン等で文字・図表類を描いたり、一 般の複写機を使って、専用のTPシートにコピーして作成する。最 近のカラー複写機では、カラー原稿から容易にカラーTPを作成で きるものもあるし、TP専用の特殊複写機や、TP用ポラロイドフ ィルムを用いる方法もある。
 OHPはただ順序通りにTPを交換していくだけでなく、受け手 の印象を深めるための提示方法を色々と工夫できるところに特色が ある。例えば、複数のシートを重ねたり分解したりして、画面の内 容を変化させながら説明していく合成分解法といわれる手法がある。 素材となる各々のTPの一辺を、四角い紙枠にセロテープで貼り付 け、重ねあわせたときに1枚の画像を構成するような位置決めをし ておいて用いる。
 シートの一部を模型的に動かせるようにしたり、偏光シートと偏 光板を用いて流動的な表現を行うこともある。透明度の高い液晶デ ィスプレイをOHPに載せて、コンピュータの画像をそのまま拡大 投影できるような装置もある。OHPには、ステージの下に光源の ある内射式(透過式)のものと、ステージが鏡状になっていてレン ズ側に光源のある反射式のものがあるが、厚みのあるTPや液晶デ ィスプレイは、反射式のOHPだと像が二重に映るので注意する。
 OHPは明るい部屋でも比較的鮮明に写るが、スクリーンの真上 の照明は必ず消す。またスクリーンが映写光軸に対して直角でない と画面が台形に歪むので、できるだけ傾斜式のスクリーンを用いた ほうが見易い。またOHPは、演者と聴衆が対面して使用できるの が特長だが、スクリーンを聴衆に対して若干斜め正面に置けば、演 者がスクリーンを隠すこともなく、見易い。
 OHPは、1枚のTPで比較的多くの文字・図表類を提示できる が、視覚的なデザインと色彩効果によって要点を強調することが大 切である。細かな図表類を提示したい場合は、図表全体を見せるシ ートと、要点となる部分を拡大したシートに分けて提示するとよい。 映写レンズにズーム機構のあるOHPもある。
 OHPを使う上で重要なのは、説明にあわせてTPを投影するタ イミングと時間である。映せば終わりとばかりに、内容を読む暇も なく次々にTPを替えると、受け手に欲求不満が生じるので充分注 意する。例えば、閲覧利用票の記入の仕方について説明するような 場合、まず未記入の利用票のTPを投影しておき、これに演者がフ ェルトペンで実際に記入していきながら説明すると、見る者がつい ていきやすい。このとき利用票のTPの上に、無地のシートを重ね て記入すれば、下のTPが何度でも再利用できる。なおTPを斜め に置いて文字が傾いていたり、いつまでも位置を決めずにグラグラ と動かし続けることも、見る者に不快感を与えるので注意したい。
 OHPは、説明の要点を視覚化して表現することで聴衆の理解を より深いものにし、演者の話術と工夫次第でいかようにも活用でき る身近なメディアとして、日常的に使いたいメディアである。
 なお、最近はビデオカメラで実物を撮影し、プロジェクターなど で拡大して見せるOHC(オーバーヘッドカメラ)といわれるもの もあり、原稿をTP化せずに拡大提示できる簡便さから普及しつつ あるが、解像力や拡大率の点では改良の余地を残している。