"山桑の弓、木草のえびら 周のお国は亡ぶでしょう"
ほうじは縁台に立って歌を歌っています。
幽王はほうじののびやかな身体が星降るような夜空を背にしているのに見とれていました。
「幽王様ほうじのお后様は周の国が滅ぶと歌っておられますがお許しおかれてよいのですか」
幽王に声をかけたのは従卒の智恵者しゅうけんです。
「よいではないか、ほうじの好きにしておけ」
「されども我が国は今、長らく繁栄の時を終えて国力日ましに衰え隷属諸侯には 反乱の気運色濃いものとなっております。
すでに毎夜の宴に富源を注ぎ込み 近年の不作とあわせ近々貯えも滞りましょう。
ほうじどののうたわるはまさに今般のわが国を占もの どうぞご戒告下さい」
国を愁うしゅうけんの言葉はしかし幽王の耳には届いていませんでした。
幽王はほうじの歌に聞き惚れて目を細めているばかりでした。
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