「幽王様、このような生い立ちの后様と申しませばこれはすでにして悪の化身とも 仏の化身ともにわかに定めかねますが、あえて申し上げればほうじどのは人で あるより前に時であり運命であります。
そして今、幽王様の御寵愛におかれますも、 まさにほうじどのの生まれ持った運命の一途にほかならず、
お二人このまま連れ添わるるは、はやり歌ののろいを待つまでもなく周の亡びを招くばかり、
幽王様にはこの度いかとも御心痛にあられましょうがここはほうじどのを故郷へお返しになり、
かつてのお后しんこう様を皇后にぎきゅう殿を皇太子に戻せられまして、
再び祭事を司り民を愛し国の盛えを盛り立てられんよう謹んでご進捗申し上げます」

けれども しゅうけん の真剣な言葉にも幽王は静かに首を振るばかりでした。
もはや幽王の心には国も民も政ごともありませんでした。

一方、この話を物陰で盗み聞きしていたのはあの腹黒い かくせきほ です。
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