「おぉ」幽王は驚いてほうじの顔に見入りましたがその時はもうほうじの顔から 笑いは消えていました。
しかし幽王は狂ったように喜びました。
その脇にいてあの腹黒い かくせきほ がさも満足げにほくそえんでいました。
ダダダ
扉を跳ね除けて寝所に駆け込んできたのは従卒の智恵者しゅうけんです。
「幽王様! 敵など一兵たりとも城に近づきあらぬを今宵峰台に火をともされるは いかとしたこと 馳せ参じた兵たちは恐れ惑いうち騒ぐばかりに」
「ええい だまらっしゃい!」
しゅうけんの言葉をかくせきほが遮りました。
「峰台に火を入れたはこのわしだ」
「何だと!」
「しかし ほうじ のお后さまにおかれては初めて御会心を得てお笑いあそばされた。
幽王さまもまた大いにご満足なるは見られるとおり」
「たわけたことを!今宵の企ていたずらに兵たちの反目をかきたてたに過ぎん!」
やがて人々は峰台に火があがったのは敵襲のためではないと知ると ただ呆然として山の端の火に見入るばかりでした。
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