伊藤敏朗ゼミ 2001年度 卒業研究論文一覧
平成13年度(2001年度卒業生)卒業研究
秋山 素子  アメリカ映画事情から追う90年代後半"映像原理主義者"〜映像の新旗手達〜
斎藤 博美  "ピーター・グリーナウェイ"―その人と作品について
坂本 竜士  60年代以降のわが国のコメディアンに関する研究
佐藤 陽弐  カメラの基本的な特性と表現方法について
塩田 陽介  映像作家"塚本晋也"〜その作品と魅力の考察〜
関根 陽介  映像による障害者へのサービスに関する研究
高橋 里枝  原作と映像化との比較に関する考察
田嶋 貴   戦後における漫画史
千陽裕美子  The Aardman Animationsに関する研究
宮谷 哲朗  ロックバンドの歴史と将来
山崎 洋介  映画における演出・演技と時代風景とのつながり


アメリカ映画事情から追う90年代後半"映像原理主義者"〜映像の新旗手達〜
秋山 素子

デビット・フィンチャー(David Fincher) は,1965年,米コロラド州生まれ.映画・プロモーション映像・CMなど多岐の映像分野で活躍.彼の映像作法についての特色などを次の観点から解析する.1.ILM,コーティフィルム,プロパガンダフィルム,MTVなどの経歴によって得たもの.2.プロモやCM監督出身の彼の映画監督としての表現方法.3.各時代における映像スタイルの違い,変化.演出の仕方.見せ方の特色.4.関係者(スタッフ・役者・批評家など)からの反応と,それぞれ作品の主人公たち.デビット・フィンチャーのフィルモグラフィーの作成し, その“若さ”に注目したい.映画監督としてデビュー当時,年が若いための悩み,苦悩などがあったことにスポットをあてようよ思う.ILM,プロパガンダフィルム,MTVなどの経験を経た彼はインディーズ出身の監督には真似できない技術と若い感覚(スタイリッシュな映像,音楽,用語を多く使用)で,今後どのように映画界に足場を築いていくことか,その可能性を考えていきたい.MTV世代が作り,支える彼の特異な作品世界を,それへの賛否両論の批評をもふくめて概括し,彼の映像作家としての才能,現代映画界における位置を浮き彫りにしたい.若い映画監督への期待,将来の映画界のありかたについても展望する.


"ピーター・グリーナウェイ"―その人と作品について
斎藤 博美

1 はじめに
2 生い立ちについて
3 短編作から長編作への流れ
3.1 年表形式での説明
3.2 それまでの流れについてのまとめ
4 長編作(長編作からの短編も含む)現在のまでの流れ
4.1 現在までの流れについてのまとめ
5 長編作からのピックアップによる説明
5.1 「ZOOについて」
5.2 「コックと泥棒、その妻と愛人」について
5.3 「ベイビー・オブ・マコン」について
5.4 「枕草子」について
6 結論


60年代以降のわが国のコメディアンに関する研究
坂本 竜士

人を笑わせることは,けっして簡単なことではないし,誰にでも出来ることでもない.そんな才能を自ら磨き,人を笑わせるという芸の道に進んだ“芸人”について興味を抱いた..芸人はそれぞれのスタイルを持ち,芸風が違えば笑わせ方も違う.しかしこだわりを持ち,人を笑わせることに全力で取り組み,人が笑ってくれたならば嬉しいという思いの強さという点では共通している.彼らの笑いの原点から現在までの芸のスタイルの変化,笑いだけでなく映画や舞台など多々の才能にも花を咲かせる彼らの存在について研究してみたい.芸人について研究することは,私たちの人生においての笑いとは何か,笑いが人にもたらすものなどが見出せるのではないかと考えるのである.いくつかの文献やビデオ,芸人のWWWサイトなどを調査中.松本人志の著作を読んだり,ドリフターズのコントを見たりして,芸人の生き方や考え,作品に迫る.可能な限り芸人のそれぞれの作品を鑑賞し,「笑いの歴史」を作成する.笑いの原点を調べるために,チャップリンからクレイジーキャッツまで幅広く調べ,また北野武の映画なども分析したい. 研究の手始めとして,ドリフターズのコント(「ドリフ大爆笑」)と北野武,明石家さんまのトーク番組(「たけし・さんま有名人の集まる店」)の各1シーンをビデオに編集し,比較してみた.この2つを見ても笑いの取り方のスタイルが違う.ドリフターズは体を張って笑いを追求し,明石家さんまは自分の私生活を笑いに変えてしまう.彼等を見ていると,仕事だから人を笑わせているというのではなく,こだわりとスタイルを持っているように見えるし,それで売れてなくなったとしても自分の芸風を貫きとおすと思われる.また,北野武のように映画の舞台で活躍している人もおり,そのあたりのつながりについても調べていきたい.こうした人々の原点から今日までの年表を作成し分析していく.以上のように,現代の人気芸人たちの笑いの原点から掘り起こし,今にいたるまでの流れをつかみ,その中から私なりに,芸人とは何かを考えていこうと思う.今までで分かった事は2つある.それは彼らがみな,独自のスタイルやこだわりを持って人を笑わすこと,人を笑わす事が出来ることに喜びを感じること,である.彼等はなぜ笑いに喜びを感じるのか,また,人は笑いによってどのような方向へと導かれるのか,そして,私たち人間にとって笑うということはどういうことなのかを追求していきたい.


カメラの基本的な特性と表現方法について
佐藤 陽弐

映画・写真・絵画などの映像表現の印象的なカットを取り上げ,その構図の意図や特徴を検証し,技法を解析する.構図を作る要素としての,線(水平線・垂直線・曲線など)・位置・カメラポジション・フレームの切り取り方・空間・色調などを研究する.映像の技法とは,シナリオやテーマに立脚したものでなければならないことに留意し,
 @ シナリオ・テーマを組み立てるために意図した構図
 A 被写体(登場人物)の心情を表す(性格を持った)構図
 B 構図の色調・明暗など,位置(黄金比など),形態などで観客が受ける心理感覚
など,作品の表現意図に合致した映像の技法のあり方について考えていきたい.
 映画・写真・絵画などの各メディアをひろく考察対象とし,その表現意図と技法について検証する.学生自主映画についても積極的に対象とし,その特徴といったものについても検証・批評したい.邦画や洋画,最近の広告,時代ごとの絵画にも言及する.
 @映像素材(ビデオテープ・写真・絵画など)による検証と,
 A作品世界を組み立てている構図の研究,そのためのシナリオや作品のテーマについて,
の把握を実証的に行っていく.
 ○線(例:「青春メンズワールド」オープニング)―水平線で大地の広がりをみせ,低い水平線を保つと,静けさが強調でき,垂直線では奥行きをみせる.
 ○位置とパースペクティブ(例:「青春メンズ〜」防波堤シーン).―観客の視線を画面の奥のものへ促す導線を形成.奥にたたずんでいる少女に目がいき,駆けて行く少年の方向がこれを強調.少年と少女の距離は圧縮されて見えるが,駆け寄るまでに時間がかかりサイズもあまり変化しないなど,望遠レンズのパースペクティブの特徴が現れている.
 ○面積の大小(例:「青春メンズ〜」ラストシーンほか)―少年の父親が,主人公の一人に語りかける.父の面積が広く,青年が話を聞きいれている様子が表現されている.
 ○色彩の強さ(明暗・鮮やかさ)―明るい光の下ではコントラストが強くなり,(生命力がみなぎっている,新鮮な)暗い光の下では明暗の幅が狭くなり,グラデーションの差も小さくなる.(物憂げで,荒涼とした)などの感情表現となる.
カメラの特性や表現方法は映画だけではなく,絵画などの分野とも影響を及ぼしあっていることに注目したい.表現技法はあくまで道具であり,作品の本質とは物語のテーマ=作家性そのものであることを忘れたくない.その表現の核心部分に触れていくことで作家の本質に少しでも近づき,あわせて自分の世界観をも広げていくことを企図したものである.


映像作家"塚本晋也"〜その作品と魅力の考察〜
塩田 陽介

1 序章
2 プロフィール
3 フィルモグラフィ
4 作品の分析
5 魅力の考察
6 まとめ


映像による障害者へのサービスに関する研究
関根 陽介

1 はじめに
2 文字放送などの聴覚障害者への必要性について
3 文字放送の仕組み
4 欧米と日本の文字放送の現状について
4.1 欧米の文字放送
4.2 日本における文字放送の現状
5 文字放送における問題点
5.1 健聴者と聴覚障害者の違い
5.2 入力方法に関する課題
5.3 提示方法に関する課題
5.4 普及促進に関する課題
6 結論


原作と映像化との比較に関する考察
高橋 里枝

1 はじめに
2 原作を映像化するにあたっての共通性
2.1 忠実に表現している点
2.2 原作と異なる点
3 同じ原作を映像化した作品の比較
3.1 共通している点
3.2 異なる点
3.3 それぞれ原作のどの部分に重点をおいているか
4 特定の脚本家の作品研究
4.1 脚本家の傾向
5 結論


戦後における漫画史
田嶋 貴

1 はじめに
2 手塚治の与えた影響
2.1 表現の変化
2.1.1  手塚漫画の作風
2.1.2  漫画とアニメーション
3 漫画史年表
3.1 年代別
3.1.1  傾向の変化を考える
3.2 ジャンル別
3.2.1 ジャンル別の考察
4 結論
4.1 大衆の漫画にたいする認知の変化
4.2 漫画の将来性
4.3 まとめ


The Aardman Animationsに関する研究
千陽裕美子

1. はじめに
2. アードマン・アニメーションズ ヒストリー
2.1 アードマン社年表
2.2 アードマン・アニメーションズの歴史
3. アードマン・アニメーションズ スタジオ  @ レセプション A 社長室 B 管理部門 C 食堂 D スタジオ E モデル制作室 F クリエイターズ ルーム G アズテック ウエスト スタジオ
4. クレイアニメーションについて
4.1 クレイアニメーションの世界  @ ストーリーボード&スケッチ A モデルメイキング B 撮影 C リップ・シンク
4.2 クレイアニメーションの歴史
5. アードマン・アニメーションズの作品について
5.1 代表作『ウォレスとグルミット』シリーズ  @ チーズ・ホリデー A ペンギンに気を付けろ! B ウォレスとグルミット危機一髪!
5.2 アードマン・アニメーションズ 短篇フィルモグラフィー
5.3 初の長編作品『チキンラン』
6. アードマン・アニメーションズの監督達  @ ニック・パーク A リチャード・ゴルゾウスキー B ピーター・ロード&デビッド・スプロクトン C ピーター・ピーク D スティーブ・ボックス E サム・フェル
7. アードマン・アニメーションズのすべて
7.1 アードマン・アニメーションズの魅力
7.2 自分にとってのアードマン・アニメーションズ


ロックバンドの歴史と将来
宮谷 哲朗

1 はじめに
2 コピーバンド,オリジナルバンドの基盤,ルーツとなるアーティスト達
3 アーティスト年表
4 バンドに影響を与えた要素
4.1 アーティスト
4.2 モノ
4.3 器材
4.3.1  器材の変化
4.3.2  カラオケの普及
4.4 影響をあたえた環境
4.4.1  路上(フォーク時代)
4.4.2  歩行者天国(野外ライブ) 4.4.3  地下ライブハウス
4.4.4  クラブハウス
5 結論
5.1 音楽のなかでなぜバンドなのか
5.2 バンドの影響・変化
5.3 まとめ
6 音楽用語集


映画における演出・演技と時代風景とのつながり
山崎 洋介

1 はじめに
2 時代風景と映画の演出とのつながり
2.1 日本映画のはじまり
2.2 戦前・戦後の日本映画で見られること
2.3 日本映画発展
2.4 現在の日本映画における演出と時代風景
3 俳優の演技検証
3.1 有名俳優の演技
3.2 演技する側と見る側の心情
4 結論