ネパール映画
  散るひと〜シリスの花〜
伊藤敏朗 監督作品・上映時間 2時間15分
原作/Parijat "Shirish Ko Phool"


解説 
第二次世界大戦中,ゴルカ傭兵として日本軍と戦い,心に傷を負った男・スヨグ.<シリス>の樹に囲まれた舘で厭世的な思索に耽る謎の女・サカンバリ.ふたつの孤独な魂は激しく衝突し,やがて奇妙に交錯していく.

1960年代のカトマンズを舞台に織りなされる秘められた愛の物語.しかし,たった一度の口づけが絶望的なまでの破滅の扉をひらく.

原作はネパールの文豪パリジャート女史が執筆し,1965年にネパール文学の最高峰・マダン賞を受賞した同名小説.国民的ともいうべき有名な作品でありながら,その内容はネパール人にとってもきわめて抽象的かつ難解とされ,長らく映画化が実現してこなかった.

この困難なプロジェクトに,『カタプタリ〜風の村の伝説〜』(2008)の伊藤敏朗監督が起用され,クランクインから4年の歳月と膨大な撮影・編集作業の結果,2時間15分の堂々たる文芸大作として遂に完成した.

主役の二人には,常にネパール映画界の第一戦で活躍し,本作プロデューサーも兼ねるガネス・マン・ラマと,モデル出身のサルミラ・グルン.ほかに同国では知らぬ人のない名優バスンダラ・ブシャール,ゴパール・ブタニら豪華俳優陣.

撮影監督ガウリ・シャンカ・ドゥンズが,世界遺産カトマンズバレーの中世都市の風景を美しい映像に定着したほか,ネパール国軍の軍楽隊長でもあるディネス・スナムが全編の音楽を手がけるなど,最高のプロフェッショナルが結集.ネパール文芸の精髄を世界に示す傑作がここに誕生した.

いまも映画が最大の国民的娯楽のネパールだが,本作の現地での試写会は絶賛の嵐に包まれ,マスメディアはこぞってこれまでの同国映画史上の最高傑作のひとつと称え,ネパール国内外の映画祭への出品も決定.<シリス>の青い花の旋風が,カトマンズから世界にむけて,いま巻き起ころうとしている.



原作 
パリジャート Parijat 1937年ダージリンに生まれる.小説家・詩人.
代表作『シリスコフル』に描かれた独特の思索と死生観は,ネパール人の深い精神性を描ききり,ネパール文芸の最高傑作として名高い.
<シリスコフル>は“シリスの花”の意.米国では『Blue Mimosa』のタイトルで英訳が出版され,根強い人気を保っている.1993年没.

プロデューサー・主演
ガネス・マン・ラマGanesh Man Lama 1958年カトマンズに生まれる.俳優・プロデューサー.フィルム・クリエーション・ネパール代表.
1990年代のTVシリーズ『カンチ』と『マイリ』で一世を風靡して人気俳優となり,多数の映画に出演.
1997年,ネパールと日本の初の合作映画『ミテリ・ガウン〜愛の架け橋』に主演.
伊藤監督とは『カタプタリ〜風の村の伝説』での主演以来,二度目のタッグを組む.
監督
伊藤敏朗 1957年大分市生.東京情報大学教授.日本大学大学院芸術学研究科博士後期課程修了・博士(芸術学).専門は映像表現論.
2008年に現地で製作した中編劇映画『カタプタリ〜風の村の伝説〜』がネパール政府国家映画賞を受賞,本作の監督オファーを受けた.
監督作品『こころ北にありて』(2003),TVシリーズ『情報大ステーション』(2004〜2006・千葉テレビ放送),著書『ネパール映画の全貌−その歴史と分析』(2011,凱風社)ほか.


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