アーティスティックな表現技術を身につけたい人へ
コンピュータグラフィックスには、奇跡ともいえるテクニックが隠されています。プロの仕事術を少しだけ公開
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 小説が映画化されると、「イメージが違う」と言い出す人がいるのはなぜ?

小説を読んで、心のなかに思い描いた映像。それは、人によって異なるものであり、他の人間(映画監督など)が製作した映画と、ぴったり同じということは、なかなかないものです。また、実際の映画では、予算や上映時間の制約から、原作の中のエピソードや登場人物などが省略されることもあります。何より、小説には小説の、映画には映画の表現手法やスタイルがあり、映像化には限界があるのです。とはいえ、映画製作者達は、映画化する小説や原作者のバックボーンを丹念に調べ、時代考証や美術・衣装に正確を期するなどして、原作を忠実に映像化することを心がけています。また一方では大胆な解釈を持ち込んで観客を驚かせようとしてもいます。プロの作った映画よりも自分の心の中の映画の方が面白い!と思えるなら、映像作家の素質アリです。(情報文化学科 教授 伊藤敏朗)

 映画『マトリックス』が火をつけた1秒120コマの超精密映像表現の仕組みは?

空中で格闘している人物の周りをスローモーションカメラがぐるっと移動する…映画『マトリックス』の印象的な場面。この手法はブレットタイム効果とかマシンガン撮影などと呼ばれています。撮影方法をタネ明かしすると…まず合成用スクリーンの前に、ワイヤーで吊った俳優。その周囲にはリモコン操作可能な120台のスチルカメラ(写真用のカメラ)をぐるりと配置します。120台のスチルカメラが、ほんの僅かな時間差で次々とシャッターを切り、その静止画像(写真)を、映画用のフィルムに1コマづつ焼き付けると、カメラの位置と俳優の演技が僅かに異なる、ダイナミックに連続したカットが完成するのです。映画のコマ数は1秒あたり24コマ。1秒120コマで撮影された映像は、映写の際、ちょうど5倍の時間をかけてスクリーンに投影されることになります。つまり、人物の演技は5分の1のスローモーションとして表現され、あの迫力あるアクションシーンが出来上がるのです。(情報文化学科 教授 伊藤敏朗)

 インターラクティブストリーミング放送の浸透で映像コンテンツの作り手が不足する?

パソコンの性能向上と、ネットワーク環境、そして映像情報を連続して送り出すことのできる「ストリーミング」技術によって、いつでもどこでも映像と接することができるようになってきました。今、映像情報は、これまでのようなマスメディア、ユーザー自らが情報発信できる、インターラクテイブ(双方向的)なメディアへと変わりつつあります。このような技術革新やニーズの高まりに対して、提供されるコンテンツや、その発信者は非常に不足しています。従来の映画やテレビ番組とは異なった新しい手法とスタイル、センスを持った若者達が求められているといえるでしょう。今後は、特定の職業に携わる人だけでなく、−般の人たちが自分なりのテーマと手法で、映像情報を送り出していくことになるでしょう。(情報文化学科 教授 伊藤敏朗)