脚本・監督 伊藤敏朗からのメッセージ 

このたび、私がネパールにおいて、この国の素晴らしいフィルムメーカーたちと協力して、映画「カタプタリ〜風の村の伝説〜」製作することとなりましたことは、まことに大きな喜びとするところです。

この映画は、ネパールの美しい村で、神の住む山から降りてきた妖精が、人間の子供達と、霊的に交流するという物語です。同時に、この映画には、さまざまなネパールの素晴らしいエッセンスが映し出されるでしょう。それは、村の人々が、信心深く、豊かに暮らしている姿であり、穏やかで色彩豊かな自然の景観であり、世界遺産ともなっている伝統的建造物などです。

私が、この映画の観客たちに伝えたいのは、心が純粋であるために霊の存在を見るこができる子供たちの素晴らしさです。私たち人間は皆、自覚があるかないかに関わらず、自分が幼い頃に大地の妖精から授かったインスピレーションによって、毎日の暮らしを営んでいます。そして、私たちは、その力に支えられて、未来をも作り上げていこうとしています。大地の妖精は、私たちに、家族と友達、そして故郷を大切にしなさいと教えたはずでした。そうすれば、あなたは幸せになると約束しました。それはとてもシンプルな約束です。しかしながら、世界の現代人の多くは、忙しい生活に疲れているために、このシンプルで大事な約束を忘れてしまいました。私たちは子供の時代には妖精が見えたはずです。しかし、私たちは成長するにつれて、妖精の姿が見えなくなりました。

ネパール国に訪れた人々は、ネパールの大地から湧き出している宗教的豊かさに触れて、この約束を思い出すことができます。それが、この映画のメッセージなのです。

ここで私は、なぜ私がこのような物語を創作したのかについて、述べたいと思います。私は数年前から、日本に住んでいるネパール人たちが、とても優秀で謙虚で素晴らしい人々であることを知っていました。そして、彼らの祖国についてよく知りたいと希望していました。昨年、私は、市川工業高校の調査団の一員として、初めてネパールを訪れました。そして私は大地の妖精との約束を思い出しました。

そして私は不思議な感覚を持ちました。私は、自分が幼いときに、この国の街で暮らしていたように思えてならなかったのです。私は初めて来た町を、とても懐かしい気持ちで歩きました。それは神秘的で、白昼夢のような体験であり、この体験を映画化できればとてもエキサイトする映画になるのではないかと思われました。

そこで私は、ネパールの俳優とスタッフの力を借りて、1本の美しい童話のような映画を作ることを企画しました。 私たちは、一緒に準備作業をすることで、強力で、家族のように仲の良いチームとなりました。このチームは、きっと素晴らしい映画を完成させることでしょう。そして、この映画を見た世界中の観客は、ネパールという国への憧れと尊敬の気持ちを抱くとともに、自分の幼いころの大切な約束を思い出すことでしょう。

私は、この映画製作のスタートにあたって、多くの幸福な偶然に助けられました。それは運命的なものだと感じています。私がこの映画を作るのではない、ネパールと日本の時空を超えた文化的交流が、私に映画を作らせるのだと感じています。どうぞ皆様の力をお貸しください。