2000年度後期グランプリ受賞

優しき逃亡者  シナリオ


登場人物

  宮沢アキヒコ(主役の逃亡者)/ 宮谷哲朗
  浜谷カンゾウ(主役の相棒)/ 浜名洋介
  伊本ゴウ(警察官A)/ 伊藤健司
  坂上リョウタ(警察官B)/ 坂本竜士
  ベンチで寝てる人/ 政本高宏
  通行人/ 小池裕一
  浮浪者/ 山崎洋介
  少女/ 海老澤優子
  (?)/ 伊藤敏朗


シーン構成・登場人物表

  1.牢屋(学内の一番上の階) 宮沢・カンゾウ
  2.廊下(学内の暗い廊下) 宮沢・カンゾウ
  3.門(学内の門) 宮沢・カンゾウ
  4.森(学内の森) 宮沢・カンゾウ
  5.駐車場(学内の駐車場) ゴウ・リョウタ
  6.公園(学校の隣の公園) 宮沢・カンゾウ・ベンチで寝てる人
  7.聞きこみ(中庭) ゴウ・通行人
  8.公衆電話(学内の公衆電話) 宮沢・カンゾウ
  9.森(学内の森) 宮沢・カンゾウ
  10.聞きこみ(学内) リョウタ・浮浪者
  11.森(学内の森) 宮沢・カンゾウ・ゴウ・リョウタ
  12.路上(学内) 宮沢
  13.牢屋(学内の一番上の階) カンゾウ
  14.緑の丘(図書館の裏) 宮沢・少女(?)



○シーン1.牢屋(本館の一番上の階の通路)Elvis Presley 「Jailhouse Rook」

  牢屋の鉄格子から2人が見える。2人は壁にもたれ、ボーッとしている。 
宮沢「なぁカンゾウ、お前と会ってから、どんぐらいたった?」
カンゾウ「1年とチョットじゃないすか。」
宮沢「そっか…俺行きたい所あるんだよね。お前どーする。」
カンゾウ「え、宮沢さん、まさか脱獄するってことですか?」
宮沢「あん。」
  カンゾウ、壁にもたれていた体を飛び上らせ、宮沢のほうを向く。
カンゾウ「マジっすか!?」
  宮沢、落ち着いている。
宮沢「ああ、無理しないでいいよ。」
  カンゾウ、少し考えて、
カンゾウ「俺も行くよ。」
  宮沢、二ヤリと笑いコントっぽく、カンゾウをドツキながら、
宮沢「無理すんなー」
  カンゾウもコントっぽく、宮沢にやり返しながら、
カンゾウ「無理してねーよ。」
  宮沢、いきなり立ち上がる。
宮沢「じゃ、行くか。」
  カンゾウ、また驚く。
カンゾウ「行くって、いま真昼間ですよ。普通、脱走は夜でしょう。」
  宮沢、オカマの真似をして、
宮沢「男は堂々と、昼間っから行かんと〜。」
  カンゾウ、ベロベロバーの顔をしてふざける。カンゾウ、立ち上がり、ズボンの中からモコモコとヘヤピンを取り出す。
カンゾウ「じゃ、行きますか。久しぶりだなぁ、勘が戻ればいいけど、」
  カンゾウ、任せろという顔でドアの前へ座り込みアピンを鍵穴に入れる。宮沢、カンゾウをおだてる。
宮沢「お前の強盗歴には、期待してるぜ。」
カンゾウ「どうなの、どうなのー、いいのー」
  カンゾウ、顔が恍惚としてくる。ガチャ、ロックが解除。カンゾウ、絶頂。

○シーン2.廊下(本館5階の暗い廊下)「Nothing Goes Right」

  2人(宮沢が前、カンゾウが後)、暗い廊下を全速力で駆け抜ける。サイレンが鳴り響く。

○シーン3.門(学内の門)
 
  2人、屋外へ走り出て、うれしそうに飛び跳ねている。門をよじ登り脱出成功。

○シーン4.森(学内の森)

  宮沢とカンゾウ、森を走ってくる。2人、小休止。
カンゾウ「あぁ、疲れた。」

○シーン5.駐車場(学内の駐車場)「Lust For Life」

  車内にいるリョウタとゴウ。携帯電話が鳴る。
携帯電話の音「ピピピピピー」
  ゴウの体がブルブルと振るえる。
ゴウ「おい、電話だぞ」
リョウタ「分かってる」
  リョウタ、携帯電話を探す。
ゴウ「早く出ろよ」
リョウタ「あれ、お前オレの電話しらねー」
ゴウ「しらねーよ」
  電話、切れる。
ゴウ「あーあ、切れちゃった」
リョウタ「絶対、お前持ってるだろー」
ゴウ「オレじゃねーよ」
携帯電話の音「ピピピピピー」
  ゴウの体、再びブルブル振るえる。
リョウタ「お前、何揺れてんだよ」
ゴウ「揺れてねぇよ!」
  リョウタ、ゴウの体を調べ、ゴウのポケットから携帯電話を取り出す。
リョウタ「お前、何でオレの携帯持ってんだよ」
ゴウ「(逆切れ)持ってねーよ」
  リョウタ、電話に出る。
リョウタ「はい、はい脱走ですか?」
  ゴウ、驚く。
リョウタ「分かりました、すぐ向かいます」
  リョウタ、電話を切る。
ゴウ「脱走?」
リョウタ「脱走だって、行くべ」
ゴウ「マジポン?」
リョウタ「マジポン!」
ゴウ「行くか」
  ゴウとリョウタの車、走り出す。
リョウタ「これ逆じゃね?」
ゴウ「そんなこたわーてるよっ!」
  のこのこと方向転換する車。

○シーン6.公園(学校の隣の公園)「Ohichyo」

  宮沢とカンゾウ、公園のベンチで寝ている男を見つける。二人、男の服とリュックを盗んで走り出す。やや走ってから、リュックの中を物色、上着やらサングラスやらを取り出し、リュックは放り捨てる。

○シーン7.街(学内の何処か)

  ゴウ、2人の写真を持ち、聞き込み。
ゴウ「すいませんこの人知りませんか?」
通行人A「あー。知りますん」
  ゴウ、一瞬考えた後、奇妙な逆キレ状態となって体を揺らしながら戻る。
ゴウ「どっちなんだ、この野郎!」

○シーン8.公衆電話(学内の公衆電話)OASIS「Don’t look back in anger」

  宮沢、誰かに電話している。カンゾウ、外でイチローの真似をして素振り。

○シーン9.森(学内の森)[Nite Drive」

  宮沢とカンゾウ、タバコをふかしながら、しゃがみこんでいる。
カンゾウ「さっき誰に電話してたんすか?」
宮沢「姉さん、俺の姉さんだ」
カンゾウ「姉さんなんかいたんすか?」
宮沢「俺の肉親ていったら、姉さんただ一人でさー…ずいぶん会ってねーうちに俺はこんなんなっちまったけど、姉さんに伝えたい事があってな。」
カンゾウ「何すか、それ」
宮沢「それは言えねーよ」
カンゾウ「何、何、何?あぁ気になるなぁ。まぁ、でも姉さんに会えるといいっすね。」
宮沢「あぁ」

○シーン10.街(学内)

  リョウタ、2人の写真を持ち、聞き込みをしている。
リョウタ「すいません、この人知りませんか?」
浮朗者「※※※※※※※※※※※※※※(さっき食べ物くれたよ)」
浮浪者「※※※※※※※※※※※※(公園の近くの森に行ったよ)」
リョウタ「マジで?」
浮浪者「※※※※※※(ホントだよ)※※※※※※※※※(お金ちょうだい)」
リョウタ「分かった!」
浮浪者「※※※※※※※(ホント)」
リョウタ「公園の近くの森ね、分かった」
浮浪者「※※※※※(まじで?まじで?)」

○シーン11.森(学内の森)BONJOJOVI「Never say goodbye」

  宮沢とカンゾウがしゃがんで休んでいるところに、ゴウとリョウタが来る。宮沢とカンゾウ、気づかない。
リョウタ「いたぞ」
ゴウ「いるなー、お前絶対気づかれんなよ、ここで気づかれたら終わりだからな」
リョウタ「分かってる、行くぞ」
ゴウ「行くか」
  ゴウとリョウタ、そっと前へ出る。と、ゴウが頭上の枝に頭をぶつけ、大きな悲鳴をあげる。
ゴウ「イテー」
  宮沢、リョウタに気づき逃げる。カンゾウもあわてて逃げるが足をつって走れない。リョウタ、カンゾウをはがいじめに取り押さえる。フラフラと立ち上がるゴウは涙声。
ゴウ「デッカイたんこぶデキちゃったぁ」
  逃げられないと悟ったカンゾウ、自分を犠牲に宮沢を逃がる。
カンゾウ「宮沢サーン、先に帰ってますよー、気をつけてくださーい」
  宮沢、カンゾウの気持ちを胸に走る。逆光の森。

○シーン12.牢屋(学内の一番上の階)

  カンゾウ、牢屋に戻されている。
カンゾウ「また、戻ってきちゃった」
  カンゾウ、宮沢のことを思いうかべる。
カンゾウ「宮沢さん、姉さんに会えたかなぁ」

○シーン13.路上(学内)

  宮沢、カンゾウのことを考え歩いている。
宮沢「…カンゾウ…ありがとう」

○シーン14.野原(図書館の裏) Disport 「Faith in myself」
  
  宮沢、姉さんを前にたたずんでいる。姉さんの前には一人の少女が立っている。宮沢、姉さんのほうへ走り出す。
 宮沢「姉さーん」
  振り向く少女に宮沢、平手を入れて、走り抜ける。姉、振り向き、驚きの表情から満面の笑みとなって宮沢へ駆け寄る。宮沢と姉さん、抱き合い喜びを分かち合う。光につつまれて回転する二人。

 【この姉というのが曲者ですが、シナリオ上では表現できません。この作品を観た方は、結末の30秒間は誰にもお話しにならないでください。】

―終