映像表現論U演習 2000年度前期課題演習「ある日の田中」


例示 脚本の狙いを、カメラのアングル・構図にいかに反映させるかが、この課題のポイント。人物をツメ気味に撮って、テンポ良く編集すると、この見本版のように、登場人物がイキイキとして見えるというお手本。

仮1班 主役の二人が、真面目な田中と、あつかましい三浦という性格を的確にとらえており、その人物描写が優れている。通行人のカットのつなげ方には無理があるが、無理やり仕上がった。

仮2班 ベンチの座り位置が途中で飛んでしまうところが難点であるが、演技の流れがスムースなので、あまり気にならない。主役2人の表情が飄々としていて、独特の雰囲気の作品になっている。

仮3班 あまり気のなさそうな三浦の好演と、不思議なイントネーションのセリフで受け流す田中。力の入らない不思議なムードで心地良い作品に仕上がっている。

仮4班 カメラのフレーミングが的確。三浦を見上げた感じのショットなど、脚本のねらいをよく理解している。主役2人の演技も上手いが、特に田中が怒ったような態度に出るところの真剣さが素晴らしい。字幕を挿入して内面のセリフをいわせているアイデアも良い。つながりの悪いところもうまく処理している。

仮5班 田中の「あーそれだけは」のセリフが力がこもっていて良い。田中のイヤイヤという感じに三浦が怒ってしまうという展開もうまくいっているが、セリフが今ひとつ明瞭ではない。マイク位置の工夫が必要。

仮6班 三浦が背面の壁から唐突に現われるところが意表をつく。まじまじと田中の顔を覗きこむあたりや、田中のセリフにうなずく演技も秀逸である。とりわけ、ラストカットで顔をしかめる田中の表情が素晴らしい。見た人の印象に強く残る作品。

仮7班 都会派キャリアウーマンの田中と闇消火器販売業の三浦という設定で、構図も演技も的確。効率の良い撮影で、声をかける男がもう一組出てくるなど、班の力量を感じさせる。消火器の無断移動はイケナイことなので、公開版に入れられなかったのが残念。

仮8班 ハンサムな少年剣士の夢之介と、完全にイってしまっている新三郎の対比が非常に見事。とりわけ新三郎の迫真の演技は怖いほどである(左)。背景が森ではなく、建物であるために、カット割は無茶苦茶なのだが、そんなことも忘れさせるほど迫力があり、素晴らしい。

仮9班 ロビーで撮影したため、声が妙に響いて、聞き取りづらいために損をしているが、カット割には工夫のあとがある。主役の2人を真後ろから捉えたカットは、わざわざ椅子を移動させて撮るなど努力しているし、三浦のクローズアップもなかなか良い。この場所では、照明を用いる必要があったろう。

仮10班 なぜか上半身裸の三浦、その上着を持っている田中。不条理だが、なんとなく納得させる力もある。ノーカット編集に挑戦して、ある程度成功してもいるが、やはりきちんとした編集を加えるのでないと完成度が高まらないというよい見本。後ろについているメイキング?が楽しい。あまり意味はないが。

仮11班 室内で収録しており、声が響きすぎてよく聞き取れない、構図の悪いカットが散見される、人の表情などが編集上うまくつながらない、などの難点があるが、病院の待合室風のロケーションで、人生の哀切を感じさせるような独特な雰囲気の作品に仕上がっており、こういう手もありかな?と思う。