2000年度作品   

ある日の田中



脚本・監督/伊藤敏朗 『ある日の田中』

なんとなく風采のあがらない学生=主人公の田中である。活気あふれるキャンパスのなかで、彼だけは妙に落ち込んだ様子である。ここ1週間、どうも彼はツキに見放されているのだ。そんな田中を友人の三浦がからかうが、田中はますます不機嫌になって「俺にかまわないでくれ。」と叫ぶのだった…。 2000年度映像表現論U演習(課題演習)のためのサンプル作品をITOメンバーで制作したもの。

出演/宮谷哲朗・坂本竜士ほか 脚本・監督/伊藤敏朗 『ある日の田中』 
シナリオ

○大学のキャンパス

  田中がベンチに腰掛けて新聞に目をおとしている。そこへ三浦がやってきて声をかける。
三浦「よう、田中。ひさしぶり。」
  田中、不機嫌そう。
三浦「どうしたんだよ。浮かない顔してやがんな。」
田中「べつに…。何だっていいだろう。」
三浦「お前、なんだか最近、つきあい悪くなったって噂じゃないか。」
田中「ほっといてくれよ。」
三浦「こないだのゼミの時だってさぁ。」
田中「あー、それを言わないでくれよ。」
  田中、顔をそむけて嘆く。
田中「とにかく俺、最近、ついてねぇんだ。だからさ。もう、ほっといてくれ。たのむよ!」
  三浦、田中の顔をのぞきこみ、なにやら意味ありげにニヤと笑う。
三浦「そんじゃあ、またな。けど、明日のコンパは絶対顔出せよな。」
  三浦、立ち去る。そこへ直美と由香がやってきて、なれなれしく声をかける。
直美・由香「田中く〜ん。久しぶりぃ。」
  田中、顔をゆがめて嘆息する。